いんじゅうそのた
「陰獣」その他

冒頭文

一 陰獣評 江戸川乱歩氏の「陰獣」は、同氏の久し振りに発表した作であったのと、同氏独特の念入りな、手のこんだ、寸分のゆるみもない作品であったとのために、探偵小説の作者仲間では、異口同音に近い好評を博したようである。私も増刊『新青年』の分を読んで、九月号は雑誌が着くとすぐに旅に出たので、旅先で買って読み、十月号の分も雑誌が着くと真っ先に読んだ。その点で「陰獣」は完全に成功している。ことに九

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年 第九巻第一三号」1928(昭和3)年11月号

底本

  • 平林初之輔探偵小説選Ⅱ〔論創ミステリ叢書2〕
  • 論創社
  • 2003(平成15)年11月10日