いずのくににて
伊豆の国にて

冒頭文

□ 文壇の人にあうと探偵小説をすいている者が多いようである。『新青年』四月号のマイクロフォンを見てもその一班が知れる。ところが探偵小説の作者や翻訳者の中には、探偵小説にあきたりない感じをもっている人が少なくとも少しはある。江戸川乱歩氏はときどきそういう口吻(こうふん)を洩らす。延原謙氏も探偵小説でないものが翻訳してみたいというような口吻を洩らしたことがある。少なくも短銃物は真っ平だと考えてい

文字遣い

新字新仮名

初出

「探偵趣味 第二年第五号」1926(大正15)年5月号

底本

  • 平林初之輔探偵小説選Ⅱ〔論創ミステリ叢書2〕
  • 論創社
  • 2003(平成15)年11月10日