あいどくさっかについてのだんぺん
愛読作家についての断片

冒頭文

私は、探偵小説は、手にはいるものは、見さかいなく、好きで読みますけれども、誰と言って、特別に好きな作家は、まずありません。 コナン・ドイルは、今でもそうとう面白く読めますが、いささか千遍一律なのが鼻につきます。数ヶ月前、本誌『新青年』の増大号にのった長編小説などは、どうも感心しませんでした。ことに、印度(インド)あたりから、超自然の力をもった僧侶をひっぱりだしてきて手品の種を明かすなどは

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年 第六巻第一〇号」1925(大正14)年8月号

底本

  • 平林初之輔探偵小説選Ⅱ〔論創ミステリ叢書2〕
  • 論創社
  • 2003(平成15)年11月10日