清水詣(きよみずもう)で 一 「ほう、よい月じゃ。まるで白銀(しろがね)の鏡を磨(と)ぎすましたような」 あらん限りの感嘆のことばを、昔から言いふるしたこの一句に言い尽くしたというように、男は晴れやかな眉をあげて、あしたは十三夜という九月なかばのあざやかな月を仰いだ。男は今夜の齢(よわい)よりも三つばかりも余計に指を折ったらしい年頃で、まだ一人前の男のかずには入らない少年であった