がまのち |
| 蟇の血 |
冒頭文
一 三島譲は先輩の家を出た。まだ雨が残つてゐるやうな雨雲が空いちめんに流れてゐる晩で、暗い上に雨水を含んだ地べたがジクジクしてゐて、はねがあがるやうで早くは歩けなかつた。その上、山の手の場末の町であるから十時を打つて間もないのに、両側の人家はもう寝てしまつてひつそりとしてゐるので、非常に路が遠いやうに思はれて来る。で、車があるなら電車まで乗りたいと思ひ出したが、夕方来る時車のあるやうな所もなかつ
文字遣い
新字旧仮名
初出
底本
- 伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典
- 学研M文庫、学習研究社
- 2003(平成15)年10月22日