あめよことば
雨夜詞

冒頭文

給仕女のお菊さんは今にもぶらりとやつて来さうに思はれる客の来るのを待つてゐた。電燈の青白く燃えだしたばかりの店には、二人の学生が来てそれが入口の右側になつたテーブルに着いて、並んで背後の板壁に背を凭せるやうにしてビールを飲んでゐた。其所にはお菊さんの朋輩のお幸ちやんがゐて、赤い帯を花のやうに見せながら対手をしてゐた。 お菊さんは勝手の出入口の前のテーブルにつけた椅子に腰をかけてゐた。出入

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典
  • 学研M文庫、学習研究社
  • 2003(平成15)年10月22日