ランプのしたで
ランプの下で

冒頭文

山にやつて來てから、もう隨分長いこと書かない。去年はほんたうに何も書きたくなかつたので、あつさりと何も書かなかつたが、今年はそんな氣持はかなぐり棄てて、ひとつうんと書いて見るつもりだ。 しかしまだ、何が書けるのやら、自分にも見當がつかない始末だ。が、今年は——秋にでもなつたら、ひよつとしたら詩が書けさうな氣がしてゐる。もし書けたら、一ぺんにどつさり發表する。それまでは、相變らず、隨筆を書

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「四季 第十六号春季号」1936(昭和11)年3月10日号

底本

  • 堀辰雄作品集第四卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年8月30日