モオリス・ド・ゲラン 「そしてこのけうで、いだいで、しかもはかないもの、いっこのしじん」
モオリス・ド・ゲラン 「そしてこの稀有で、偉大で、しかも果敢ないもの、一個の詩人」

冒頭文

モオリス・ド・ゲランの作品は、その製作過程においてその效果を考へたやうなところの少しも感ぜられない、稀有なる作品の一つである。彼はその生前には、ただ、ニコラス・ド・フリエに就いての小論文を發表したにすぎない。そしてその「サントオル」は彼の死後一年ほどして、ジョルジュ・サンドのかなり野心のあつた紹介によつて「兩世界評論」(一八四〇年五月十五日)にはじめて公にせられたのであつた。 その當時モ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「四季 第八十一号」1944(昭和19)年6月27日

底本

  • 堀辰雄作品集第五卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年9月30日