フローラとフォーナ
フローラとフォーナ

冒頭文

プルウストは花を描くことが好きらしい。 彼の小説の中心地であるとさへ言はれてゐるコンブレエといふ田舍などは、まるで花で埋まつてゐるやうに描かれてゐる。山査子(さんざし)だとか、リラだとか、睡蓮だとか…… 第二部の「花さける少女の影に」になると、その表題からして作者の花好きらしいことが偲ばれる。ことに子供の時分に、一晩中、ランプの下で、林檎の一枝を手にしてその白い花を飽かず見つめ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 堀辰雄作品集第五卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年9月30日