ジャム、きみのいえは
ジャム、君の家は

冒頭文

「マルテの手記」の一節に、巴里の陋巷で苦惱に充ちた生活をしてゐる孤獨なマルテが、或日圖書館で讀んだ一人の田園詩人——山のなかの靜かな古い家で、花や小鳥や書物などを相手にして暮らしてゐられるその幸福な詩人のことをひそかに羨望するところがある。その一節は讀者に忘れがたい印象を殘すが、その田園詩人はフランシス・ジャムだと云ふことになつてゐる。 この頃ジャムの囘想記をひもといてゐたら、第三卷のはじめ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 堀辰雄作品集第五卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年9月30日