エトランジェ
エトランジェ

冒頭文

七月二十三日 夕方だのに汽車は大へん混んでゐた。大部分は輕井澤へ行く人たちらしい。私の前には「天國新聞」といふのを束にしてかかへてゐる牧師さんがひとり。向隣りの席には、洋裝をした十九ぐらゐのお孃さんと、その連れらしいゴルフ服を着た中年の紳士の二人づれ。その紳士はそのお孃さんの叔父さんぐらゐの年輩だが、さうぢやないらしい。ほんの知合と云つたやうな樣子である。……それにしても高崎までの汽車の中の

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「婦人サロン 第四巻第十号」1932(昭和7)年10月号

底本

  • 堀辰雄作品集第四卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年8月30日