アイン ツヴァイ ドライ
Ein Zwei Drei

冒頭文

1 本輯に「栗鼠娘」を書いてゐる野村英夫は、僕の「雉子日記」などに屡〻出てくる往年の野村少年である。冬になるとよく病氣をしてゐたが、そのころはいかにも牧童なんぞになつたら似合ひさうな少年で、死んだ立原道造なども弟のやうにかはいがつてゐたものだ。が、この少年、おとなしさうに見えて、なかなかの強情つぱりで、それには立原もよく手こずり、「このごろ野村君は、堀さんのいふことなら何んでもきくが、僕のい

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「高原 第一輯」1946(昭和21)年8月20日

底本

  • 堀辰雄作品集第四卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年8月30日