りょくようたん
緑葉歎

冒頭文

青葉頃になると、どうも僕の身體の具合が惡くなるのです。それにやられまいと思つて、隨分用心してゐるのですが、いつのまにかやられてゐます。こんどなども、ちよつと氣分が惡かつたので、二三日安靜にしてゐたら、それからずつと微熱が續いて、もう半月ばかりになるのに、いまだに寢込んでゐる始末です。それにどうしたのか、足がなやんでなりません。あの足首の、丁度靴下が一番先に穴のあいてしまふところですが、あそこのとこ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「セルパン 第六十五号」1936(昭和11)年7月号

底本

  • 堀辰雄作品集第四卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年8月30日