「よくせんき」など
「浴泉記」など

冒頭文

温泉のあまり好きでない私に温泉のことを何か書けといふのである。何か書けるだらう位に、高をくくつてゐたが、いざ書かうとすると、何を書いたらいいのか分らないので、なかなか書き出せない。…… さつきから机には向つてゐるものの、しやうがないので、二三日前に買つてきた Insel 版のゲエテ詩集をあつちこつちめくつてゐる許りである。拾ひ讀みなどをしてゐるのではない。そんなことの出來るほどに私は未だ獨逸語

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「帝国大学新聞 五百五十二号」1934(昭和9)年11月28日

底本

  • 堀辰雄作品集第四巻
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年8月30日