ぼくか おんちみほこじょうに
牧歌 恩地三保子嬢に

冒頭文

あなたの、お父さんの雜誌に書けといはれた隨筆でも書けたら書かうと思つて、かうやつてけふも森の中へ、例の大きな drawing-book をかかへて、來てゐるのです。僕の住んでゐる屋根裏部屋なんぞにくすぶつてゐるより、森の中でもぶらぶらさ迷つてゐるときの方が、ずつといい考への浮ぶのは當然。しかし僕も頭が惡くなつたせゐか、せつかくいい考へが浮んでも、そばから物忘れをしてしまふので、(ひとつにはそんな

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「書窓 第五巻第一号」1937(昭和12)年10月号

底本

  • 堀辰雄作品集第四卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年8月30日