マダムさだやっこ
マダム貞奴

冒頭文

一 人一代の伝を委(くわ)しく残そうとすれば誰人(だれ)を伝しても一部の小冊は得られよう。ましてその閲歴は波瀾万丈(はらんばんじょう)、我国新女優の先駆者であり、泰西(たいせい)の劇団にもその名を輝かして来た、マダム貞奴(さだやっこ)を、細かに書いたらばどれほど大部(たいぶ)の人間生活の縮図が見られるであろう。あたしは暇にあかしてそうして見たかった。彼女の日常起居、生れてからの一切を聴(き)

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人画報」1920(大正9)年2~4月

底本

  • 新編 近代美人伝(上)
  • 岩波文庫 、岩波書店
  • 1985(昭和60)年11月18日