ひづけのないにっき
日付のない日記

冒頭文

今朝も七時ごろに目が覺める。 それから一時間ばかり、私は寢床の上で、新聞を讀みながら、日光浴をやる。この頃は、丁度おあつらへ向きに、その時分になるともう朝日が一ぱい寢床の上にあたりだす。 八時頃やつと起きる。自分でパンをあぶり、チイズを切り、紅茶をいれる。無精な私なのだが、これだけは自分でしないと氣にいらない。 郵便物がくる。その中に雜誌が二三册と、江川書房からの小包

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「帝国大学新聞 第四百三十号」1932(昭和7)年5月2日

底本

  • 堀辰雄作品集第四卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年8月30日