にさんのついおく
二三の追憶

冒頭文

一高の頃のことを考へると、いまでもときをり逢ふことのある友達のことよりか、もうお逢ひできさうもない先生方のことがひとしほなつかしく思ひ出される。……          ⁂ 私になつかしい先生の一人は石川光春先生である。あのうすぐらい階段教室ではじめて先生の講義をきいたときは、植物學といふものが實に高尚な學問のやうにおもはれ、急に自分までが大人になつたやうな氣がした。いま考へてみると、それはむしろ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「向陵時報 第百四十三号」1942(昭和17)年6月7日

底本

  • 堀辰雄作品集第四巻
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年8月30日