なつのてがみ たちはらみちぞうに
夏の手紙 立原道造に

冒頭文

七月二十五日、信濃追分にて この前の土曜日にこちらに來るかと思つてゐたが、とうとう來られなかつたね。君のゐる大森の室生さんの留守宅の方へ手紙を出すと、どうも郵便物はみんな輕井澤の別莊の方へ∱E送されてしまふらしいから、君の働いてゐる建築事務所宛にこの手紙を出すことにした。が、どうも輕井澤に建てるヒュッテの設計を頼む手紙ででもあるのならいいが、君に詩集を貰つたお禮を書くんぢやあ、なんだか少

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「新潮 第三十四巻第九号」1937(昭和12)年9月号

底本

  • 堀辰雄作品集第四卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年8月30日