しゅんじつちち |
春日遅々 |
冒頭文
四月十七日 追分にて ホフマンスタアルの「文集」を讀み續ける。嘗つてビアンキイ女史がこの詩人のことをリルケと竝べて論じてゐた本を讀んだ折、既に物故したこの詩人のパセティックな、眞の姿を知つて、それ以來何となく心を惹かれてゐたが、最近その文集の佛譯を手に入れることが出來て、數日前から讀み續けてゐるのである。 これまで讀了した數篇——シェクスピアを論じて劇の本質は性格描寫や筋などには無
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「文藝 第五巻第六号」1937(昭和12)年6月号
底本
- 堀辰雄作品集第五卷
- 筑摩書房
- 1982(昭和57)年9月30日