しじんもけいさんする
詩人も計算する

冒頭文

「吾人の賞美する建築は、その建築家が目的によく副ふやうな手段を用ひて、その柱が、エレクションの麗はしき人像柱の如く、上にかかる重みを苦もなく輕々と支へてゐるやうな建築である。」 アンリ・ポアンカレ さて、いま僕らの努力してゐるのは、詩を文學から引離すことである。文學はもはや手品師がクリストに似てるやうにしか詩に似てゐない。多くの人々は文學によつて手品によつての如くにだまされる。

文字遣い

旧字旧仮名

初出

詩的精神「帝国大学新聞 第二百九十六号」1929(昭和4)年5月13日、芸術のための芸術について「新潮 第二十七巻第二号」1930(昭和5)年2月号、超現実主義「文学 第三号」第一書房、1929(昭和4)年12月1日、すこし独断的に――超現実主義は疑問だ「帝国大学新聞 第三百三十七号」1930(昭和5)年4月28日、小説の危機「時事新報」1930(昭和5)年5月20日

底本

  • 堀辰雄作品集第五卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年9月30日