ししゅう「まど」 |
詩集「窓」 |
冒頭文
私はいま自分の前に「窓」といふ、插繪入りの、薄い、クワルト判の佛蘭西語の詩集をひろげてゐる。その表題の示すごとく、ことごとく、窓を主題にした十篇の詩を集めたもので、そのおのおのに一枚づつ插繪が入つてゐるのである。 その詩のいづれもが、とある窓の下を通りすがりにちらつと垣間見たその内側の人生だの、或はその窓のみを通してその内側の人生と持ち合つたはかない交渉だのを歌つたものだが、所詮さう云つ
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「むらさき 第五巻第三号」1938(昭和13)年3月号
底本
- 堀辰雄作品集第五卷
- 筑摩書房
- 1982(昭和57)年9月30日