くろかみやま
黒髪山

冒頭文

源氏物語の「總角(あげまき)」の卷で、長患ひのために「かひななどもいとほそうなりて影のやうによわげに」、衾(ふすま)のなかに雛(ひいな)かなんぞの伏せられたやうになつたきり、「御髮(みぐし)はいとこちたうもあらぬほどにうちやられたる、枕よりおちたるきはの、つやつやと」した宇治の姫君が愛人の薫(かをる)の君たちにみとられながら、遂に息を引きとつてしまふ。そのとき薫の君が「夢かとおぼして、御殿油(おほ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「改造 第二十三巻第十三号」1941(昭和16)年7月号

底本

  • 堀辰雄作品集第五卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年9月30日