きんきょう
近況

冒頭文

神西君が僕のことを山のぼりなどしたやうに書いたものだから、みんながもつと身體に氣をつけて、あんまり無茶をしないやうにといつてよこす。この五月の末ごろの或る温かい日、家のものたちと裏の山へ楤(たら)の芽をとりにいつて、つい氣もちがいいまま、二三時間山で過ごした。——そんなちよつとした山あそびが、いつか僕の山のぼりとなつて友人たちの間に傳はつたわけだ。それが僕のからだに祟つたのでもなからう。わが茅屋の

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「四季 第四号」1947(昭和22)年4月20日

底本

  • 堀辰雄作品集第四卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年8月30日