きしゅクリストフ・リルケしょう |
旗手クリストフ・リルケ抄 |
冒頭文
「旗手クリストフ・リルケの愛と死の歌」はリルケの小時の作(一八九九年)である。 詩人は若いころ自分が「森の七つの城のなかで三つの枝の花咲いた」由緒のある貴族の後裔であるといふ追憶を愛してゐた。彼はさういふ古い種族の「最後の人」であるとみづから考へ、彼の存在の根をふかく過去のなかに求めんとしてゐたのである。さうしてドレスデンの國有文庫に殘つてゐた自家に關する古文書の中に旗手クリストフ・リルケの
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「高原 第一輯」1946(昭和21)年8月1日
底本
- 堀辰雄作品集第五卷
- 筑摩書房
- 1982(昭和57)年9月30日