しんじゅうなにわのはるさめ
心中浪華の春雨

冒頭文

一 寛延(かんえん)二己巳年(つちのとみどし)の二月から三月にかけて、大坂は千日前(せんにちまえ)に二つの首が獄門に梟(か)けられた。ひとつは九郎右衛門という図太い男の首、他のひとつはお八重という美しい女の首で、先に処刑(しおき)を受けた男は赤格子(あかごうし)という異名(いみょう)を取った海賊であった。女は北の新地のかしくといった全盛の遊女で、ある蔵(くら)屋敷の客に引かされて天満の老松辺

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 江戸情話集
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1993(平成5)年12月20日