いせものがたりなど |
伊勢物語など |
冒頭文
今夜、伊勢物語を披いて居りました。そのうちふいと御誌からのお訊ねを思ひ出しましたので、とりあへずペンを取つて、只今、考へてをるがままに書いて見ることにします。 僕がこのペンを取るまで、氣もちよく讀みふけつてゐた伊勢物語の一段はかういふのです。短いものなので、全部引用してみませう。 むかし、男ありけり。人の娘のかしづく、いかでこの男にものいはむと思ひけり。うち出でむこと難
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「文藝 第八巻第六号」1940(昭和15)年6月号
底本
- 堀辰雄作品集第五卷
- 筑摩書房
- 1982(昭和57)年9月30日