あるがいこくのこうえんで
或外国の公園で

冒頭文

「……伊太利は好い效果を與へてくれましたけれど、こんどは私には北方が、空間が、風が必要になつたやうな氣がいたします……」と、一九〇四年四月二十九日、當時羅馬に滯在してキエルケゴオル、ヤコブセン等の作品を好んで讀んでゐたライネル・マリア・リルケはそのスカンヂナヴィア在住の女友達エレン・ケイに宛てて書いてゐる。エレン・ケイはルウ・アンドレアス・サロメ等と共にリルケの最初の知己たちの一人で、その頃既にス

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「知性 第三巻第六号」1940(昭和15)年6月号

底本

  • 堀辰雄作品集第五卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年9月30日