「こだいかんあいしゅう」どくご |
「古代感愛集」読後 |
冒頭文
お寒くなりました しかしそれ以上に寒ざむしい世の中の變り果てた有樣のやうでございますね ときどき東京に行つて歸つてきた友人などに東京の話を聞くたびに、先生などいかがお暮らしかと、心の痛いやうな思ひをいたします さういふ折など、いつぞや頂戴いたした御手づつの「古代感愛集」を披いては、さういふ一切を超えられた、先生の搖ぎもなさらぬやうなお姿を偲んでは、何かと心を擾しがちな自分の氣おくれを叱つて居ります
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「表現」角川書店、1948(昭和23)年8月25日
底本
- 堀辰雄作品集第五卷
- 筑摩書房
- 1982(昭和57)年9月30日