「オルジェルはくしゃくのぶとうかい」 |
「オルジェル伯爵の舞踏会」 |
冒頭文
これはレイモン・ラジィゲの小説だ。私はこの小説について語る前に、まづ作者ラジィゲについて一言したい。ラジィゲは一九二三年に二十で死んだ詩人だ。今生きてゐても私より一つ年上なだけである。そしてこの小説は十九で書いたのだ。彼はランボオのやうな「恐るべき子供」だ。しかし彼がランボオよりもつと驚かせるのは、さういふ「恐るべき子供」に特有な異常さが、彼には一寸も無いことだ。ラジィゲの才能は通常な風をしてゐる
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「婦人サロン 第一巻第三号」1929(昭和4)年11月号
底本
- 堀辰雄作品集第四卷
- 筑摩書房
- 1982(昭和57)年8月30日