よつばのうまごやし
四葉の苜蓿

冒頭文

1 夏に先立つて、村の會堂の廣場には辛夷(こぶし)の木に眞白い花が咲く。まだ會堂に閉されてゐて、その花の咲いてゐる間、よくその木のまはりで村の子供たちが日曜日など愉しさうに遊んでゐる。その花が散つて、すつかり青葉になつた頃、その村に夏を過しに來た人々がその會堂に出たりはひつたりしはじめる。 その頃から、こんどは村の古いホテルの裏の塀に沿つて、村で一番美しいと云はれるさるすべりの木がこれも眞白

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「新女苑 第五巻第十号」1941(昭和16)年10月号

底本

  • 堀辰雄作品集第四卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年8月30日