ななつのてがみ あるおんなともだちに
七つの手紙 或女友達に

冒頭文

一 一九三七年九月十一日、追分にて お手紙を難有う。私達の仲間のものはもう殆ど此村から引き上げて行きました。さうしてこれからは、この小さな村の何もかも、みんな私が一人占めです。 夏の間、みんなでよくおしやべりをしにいつたあの栗の木、——さういふ私達の午後のために涼しい木蔭をつくつてゐてくれた、あの栗の木の下に、私は二三日前から、一人でもつて本や紙を一かかへ抱へていつては、そこで山蟻などを殺

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「新潮 第三十五巻第八号」1938(昭和13)年8月号

底本

  • 堀辰雄作品集第四卷
  • 筑摩書房
  • 1982(昭和57)年8月30日