六月二十日 これでもう山小屋に雨に降りこめられてゐること一週間。——「雨の輕井澤もまたいいです」などと友達に手紙を書いてゐた女房も、きのふあたりから少し氣が變になつてゐはしないかと思ふ位。 ——何しろ、樅の木なんぞの多い山のなかの一軒家だものだから、雨の音が騷がしいほど大きく、それがまた絶えずさまざまな物音に變化して聞える。 子供の頃聞き慣れた支那語の唄がとぎれとぎれ