かお |
顔 |
冒頭文
路易(るる)はすぐ顏をぱあつと赤くした。 自分でもいやな癖だと思つてゐたけれど、どうしやうもないのであつた。何でもないのに「そら、また……」といふ氣がひよいとする。が、その時はもう遲い。見る見るうちに彼の頬は薔薇色になつてしまふ。同級生たちには「吸取紙」といふ綽名までつけられる。どうしてこんなんだらう。いやだなあと彼は悲しんでゐる。その癖、路易の毛髮と言つたら! それは硬くて硬くて、ほとんど
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「文藝春秋 第十一年第一号」1933(昭和8)年1月号
底本
- 堀辰雄作品集第一卷
- 筑摩書房
- 1982(昭和57)年5月28日