たびへのいざない
旅への誘い

冒頭文

喜美子は洋裁学院の教師に似合わず、年中ボロ服同然のもっさりした服を、平気で身につけていた。自分でも吹きだしたいくらいブクブクと肥った彼女が、まるで袋のようなそんな不細工な服をかぶっているのを見て、洋裁学院の生徒たちは「達磨さん」と称んでいた。 しかし、喜美子はそんな綽名をべつだん悲しみもせず、いかにも達磨さんめいたくりくりした眼で、ケラケラと笑っていた。 「達磨は面壁九年やけど、私

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 定本織田作之助全集 第六巻
  • 文泉堂出版
  • 1976(昭和51)年4月25日