つまのな
妻の名

冒頭文

朝から粉雪が舞いはじめて、ひる過ぎからシトシトと牡丹雪だった。夕方礼吉は雪をふんで見合に出掛けた。雪の印象があまり強すぎたせいか、肝賢の(ママ)相手の娘さんの印象がまるで漠然として掴めなかった。翌朝眼がさめると、もうその娘さんの顔が想い出せなかった。が想い出せない所を見ると、満更わるい印象を受けたわけではないのだろうと思い、礼吉は貰う肚を決めた。 貰うと決めてみると、さすがになんだか心細

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 定本織田作之助全集 第六巻
  • 文泉堂出版
  • 1976(昭和51)年4月25日