めがね
眼鏡

冒頭文

三年生になった途端に、道子は近視になった。 「明日から、眼鏡を掛けなさい。うっちゃって置くと、だんだんきつくなりますよ」 体格検査の時間にそう言われた時、道子はぽうっと赧くなった。なんだか胸がどきどきして、急になよなよと友達の肩に寄りかかって、 「うっちゃって置くと、ひどくなるんですって」 胸を病んでいると宣告されたような不安な顔をわざとして見せたが、そのくせちっとも心配な

文字遣い

新字新仮名

初出

「令女界」1943(昭和18)年6月

底本

  • 定本織田作之助全集 第六巻
  • 文泉堂出版
  • 1976(昭和51)年4月25日