わたしのせんせい
私の先生

冒頭文

私は十三歳の時に、中国の尾道(おのみち)と云う町でそこの市立女学校にはいった。受持ちの教師が森要人と云うかなりな年配の人で、私たちには国語を教えてくれた。その頃、四十七、八歳位にはなっていられた方であったが、小さい私たちには大変おじいさんに見えて、安心してものを云うことが出来た。作文の時間になると、手紙や見舞文は書かせないで、何でも、自由なものを書けと云って、森先生は日向(ひなた)ぼっこをして呆(

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸首都」1935(昭和10)年4月

底本

  • 林芙美子随筆集
  • 岩波文庫
  • 2003(平成15)年2月14日