わがよせせいしゅんろく
わが寄席青春録

冒頭文

第一話 寄席ファン時代 毎々言うが、私の青春は暗黒だった。で、その頃寄席へ行って名人上手の至芸に接するたび、つくづくアベックで聴きに来ている人々がうらやましかった。ことに相手が美しい人たちだといっそうだった。俗にかみはくと仲間から呼ばれていた神楽坂演舞場へよく来ていた美男美女のカップルなど、二十余年を経た今日といえども、まざまざとそのあえかな面輪を羨ましく思い泛べることができる。かくして私は

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 寄席囃子 正岡容寄席随筆集
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 2007(平成19)年9月20日