したまちさいじき
下町歳事記

冒頭文

時雨・雪・三味線堀 亡くなられた泉鏡花先生のお作の中でも、「註文帳」は当然代表作の一つに数へていいものだらう。殊に雪もやひの日の鏡研ぎ五助の家のただずまひ、雪明りの夜の吉原の撥橋(はねばし)、おなじ雪の夜更けの紅梅屋敷——情が、姿が、廓の景色が、マザマザ手に取るやうに浮かんで来てたゞたゞ敬服のほかはない。 が、あの五助の家のくだりであぐねてゐた空から白いものがチラつきだし、軈て

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 東京恋慕帖
  • ちくま学芸文庫、筑摩書房
  • 2004(平成16)年10月10日