りょかくきじけん
旅客機事件

冒頭文

1 ——E・S微風、驟雨(しゅうう)模様の薄曇。 「乗客は幾人だね?」 煙草を銜え、飛行服のバンドを緊(し)め直し乍ら、池内(いけうち)操縦士が、折から発動機(エンジン)の点検を了(お)えて事務所に帰って来た、三枝(さえぐさ)機関士に訊ねた。 「二名だよ」 外では、ブルンブルンBr……と、湖水の水のように、ひんやり静まり清まった緻密な空気を劈(つんざ)いて、四百五十馬

文字遣い

新字新仮名

初出

「探偵」駿南社、1931(昭和6)年11月号

底本

  • 「探偵」傑作選 幻の探偵雑誌9
  • 光文社文庫、光文社
  • 2002(平成14)年1月20日