ながうたかんじんちょう (けいこやさつじんじけん) |
ながうた勧進帳 (稽古屋殺人事件) |
冒頭文
一 師匠の名は杵屋花吉(きねやはなきち)と申されました。年は二十三、まだ独身でございました。何んでも、七つか、八つの時から、長唄のお稽古を始められたのだそうでございまして、十七の春には、もう、立派な名取さんであった、というのでございますから、聡明なお方には、違いなかったでございましょう。 しかし、それにいたしましても、あの傍の見る目もいじらしい程な、お母さんのきついお仕付けがござい
文字遣い
新字新仮名
初出
「月刊探偵」黒白書房、1936(昭和11)年5月号
底本
- 「探偵」傑作選 幻の探偵雑誌9
- 光文社文庫、光文社
- 2002(平成14)年1月20日