はなびのゆめ
花火の夢

冒頭文

花火で忘られない記憶は、私の家の屋根へ風船の付いた旗の落ちたことだ。「落ちてゐた」といつた方がいゝかもしれない。旗はガンピの日章旗で、畳三畳敷位ゐの大きさであつたらう。これに相当大きな風船と、細長く紙を幾重にもたゝんで出来た旗竿が付いてゐた。旗竿の部分には鉛がところどころに綴込んであつた。——これが私の見てゐる前で、私の家の屋根瓦へすれすれについて、くにやりと曲がつた時には、私はその一端をしつかと

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 東京の風俗
  • 冨山房百科文庫、冨山房
  • 1978(昭和53)年3月29日