僕の描いたこの絵は果して非常に「東京」の感じがするのかどうか、ぼくにはわからない。ぼくには「東京の」といふよりもこの暗い夜景は「銀座近くの」感じがせずに山谷堀でも描いてゐるやうな心持だつたのが実感だ。尤も空の重く垂れた、花ぐもりといふにはまだ寒すぎる晩だつた。この絵を数寄屋橋の上から描いた晩は。 注文は「なるべく東京の感じのするところ」といふのである。ぼくはそれで突差に思ひ出したのは、いつか