みのわしんじゅう
箕輪心中

冒頭文

一 お米(よね)と十吉(じゅうきち)とは南向きの縁に仲よく肩をならべて、なんにも言わずに碧(あお)い空をうっとりと見あげていた。 天明(てんめい)五年正月の門松(かどまつ)ももう取られて、武家では具足びらき、町家では蔵(くら)びらきという十一日もきのうと過ぎた。おととしの浅間山(あさまやま)の噴火以来、世の中が何となくさわがしくなって、江戸でも強いあらしが続く。諸国ではおそろしい飢

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 江戸情話集
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1993(平成5)年12月20日