わたしのかお
私の顔

冒頭文

寫眞を出して並べたわたくしの顏は、どれもこれも、みんな違つてゐる。それは、自分の顏であるから、見違へるわけはないが、體つきと、着物と、髮の具合をとりかへたらばちよいと自分でも分明(わか)らなからうと思ふのさへある。 その時の氣分がこんなにムラなのかしら、と、反省させられるのだが、わたしはバカで、どうも、種々なことが、うちむかう人の氣分を察しすぎて、やりきれないほど疲勞(くた)びれてしまふ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「アサヒカメラ」1938(昭和13)7月1日

底本

  • 随筆 きもの
  • 実業之日本社
  • 1939(昭和14)年10月20日