ぺきんのせいかつ
北京の生活

冒頭文

そのころ、義弟の住居は、東三條胡同といふ、落着いた小路にあつて、名優梅蘭芳の邸とおなじ側にあつたが、前住のふらんす婦人の好みで、多少ふらんす風に改築された支那家屋だつた。 であるからかも知れないが、玄關をはいると、水族館とも箱庭式ともどつちともつかない、噴水と泉水と、花壇と鉢植の一間があつて、夜は花やかな電燈が點くやうになつてゐる。地下室のレストーランなどが眞似てもよい——また、どこかそ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「文藝春秋」1937(昭和12)年11月

底本

  • 中央公論社
  • 1939(昭和14)年2月10日