チビのたましい |
チビの魂 |
冒頭文
彼女も亦(また)人並みに——或ひはそれ以上に本能的な母性愛をもつてゐた。間歇(かんけつ)的ではあつたが、五年も六年も商売をしてゐたお蔭で、妊娠の可能率が少ないだけに、尚更(なほさ)ら何か奇蹟(きせき)のやうに思へる人の妊娠が羨(うらや)ましかつたり、子持の女が、子をもつた経験のないものには迚(とて)も想像できない幸福ものであるやうに思へたりしてならないのであつた。子供といへば豕(ぶた)の仔でも好き
文字遣い
新字旧仮名
初出
「改造」1935(昭和10)年6月
底本
- 現代文学大系 11 徳田秋声集
- 筑摩書房
- 1965(昭和40)年5月10日