ぼんぐあねごこう
凡愚姐御考

冒頭文

義理人情の美風といふものも歌舞伎芝居の二番目ものなどで見る親分子分の關係などでは、歪んだ——撓(た)めた窮屈なもので、無條件では好いものだといひかねる。立てなくつてもいい義理に、無理から無理を生ませてゐる。人情にしてもまことに低級卑俗だ。大局とか、大義とか、さういふものには眞つくらで、ただ、ただ親分のためとか、顏が立たぬとかでもちきつてゐる。しかも、その親分、いかさまでない實力と、金のはいるのは昔

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「文藝春秋 昭和十一年二月號」1936(昭和11)年2月

底本

  • 中央公論社
  • 1939(昭和14)年2月10日