鰹といふと鎌倉で漁(と)れて、江戸で食べるといふふうになつて、賣るも買ふも、勇(いさ)み肌(はだ)の代表のやうになつてゐるが、鰹は東南の海邊では、どこでも隨分古くから食用になつてゐる上に、鰹節の製造されたのも古いと見えて、社(やしろ)の屋根の鰹木は、鰹節をかたどつたものだと、「舍屋の上に堅魚を」と古事記にあれば、水の江の浦島の子をよめる萬葉の長歌には 春の日の霞める時に住吉の、岸に出